チームリーダーの呪いに苦しむ新米リーダーへ
「チームリーダー」になれなかった頃。上の記事で書いたプロジェクトが始まった頃から、およそ一年が経ちました。振り返れば良い経験で、記事に書いた思いは今も変わっていません。
それでも、最近、新たにチームリーダーを任されるようになった後輩などを見ていて、新米リーダーの思考を縛る「チームリーダーにならなきゃ」という呪いの強さを改めて感じています。
チームリーダーにならなきゃと思って、なれなくて、そんなことチームメンバーにも相談できなくて、孤独に悩み続ける日々。同じような悩みを抱えている方や、一年前の自分自身へ、いまの自分から伝えたいことを書いてみます。
「なんでもできるすごいリーダーになる」のを諦めること
会社においては「なんでもできるなんかすごい人」がリーダーをやっていることがままあります。こういう人を見て育ってきた新米リーダーは、"自分もこうならなければ"と思ってしまう。
これがすべての始まりです。
弊社にもすごいリーダーたちがいて、彼らを見てると「リーダーたるもの、彼らのようになんでもできるようにならなきゃ」って考えてしまう。
だけど、こうして悩みにぶつかる人は、おそらくそのような「なんでもできるなんかすごい人」ではないし、きっと同じようにできないから悩んでいるのだと思います。
もしも自分がすごいリーダーになれるなら素敵だ。けれど去年ブログに書いたように、わたしは、決してそれが唯一にして理想のリーダー、ではないと思っています。*1
すごいリーダーになりたいと願っても、今すぐにはなれないし、いつなれるかもわからない。そんな不確かなすごいリーダーを目指すよりも、自分がすごい人じゃないことを受け入れて、「今の自分がなれるリーダーになること」を考えた方が、きっと楽です。
「理想のリーダー像」は、チームの状態によって異なるのだと知ること
リーダーの呪いにかかり、「すごいリーダーのようにできない」と帰り道で落ち込む毎日。そんな中で、先輩のすすめを受けて「エラスティックリーダーシップ」を読みました。*2
この本では3つのリーダーシップが紹介されています。
- サバイバルモードのチームに対する、指揮統制型のリーダー
- 学習モードのチームに対する、コーチのリーダー
- 自己組織化モードのチームに対する、ファシリテーターのリーダー
要は、チームの状況を見て自分がどのスタイルのリーダーになるのが良いかを見極めよう……っていうのが内容なんですが、ここにシンプルな気づきがあります。
少なくともこの本の中では、3つのリーダー像が提示されている。つまり、理想のリーダー像はひとつではないということです。これをもし知らなかったのなら知ってほしいです。わたしは知らなかったので目からウロコでした。
わたしがこの本から得た学びは、「漠然と自分の中にあった理想のすごいリーダー像」はただの妄想だったということです。理想のリーダー像なんてチームの状態によっていくらでも変わるのです。
リーダー像の妄想を捨てたら次は「リーダーの仕事」という妄想も捨てること
前述のように、当時はリーダーになるなら「なんでもできるすごいリーダー」を目指さなければいけないと思っていました。 自分がコードを書く時間が取れなくとも、調整や打ち合わせや面倒なあらゆることを引き受けて、メンバーがなにも気にせずコードを書けることがリーダーの役割だと考えていました。
ですが、振り返ってみると、チームメンバーからはわたしが何をやっているかわからなかったはずです。コードも書かないから、仕事をしていないように見えたと思います。一方で実装以外の問い合わせも打ち合わせもわたしのみが知っている状態で、常にわたしが情報のボトルネックでした。
これは単純に情報共有をしていないだけではなくて、コーディングのみを丸投げしているのが問題でした。そもそも前提となるサービス仕様や要件を知ってもらおうとしてないため、たとえ打ち合わせの情報を共有したところで、メンバーはどうしようもなかったのではないかと思います。
そんな日々が続いて、自分は好きでもない調整ばかりで楽しくコードを書く時間がない。チームメンバーとも対立して、チーム全体の雰囲気は悪くなる一方。とても苦しかったです。
結局、打ち合わせはメンバーにお願いしてもいいし、もちろんリーダーがコード書いててもいいです。誰か一人にしかできない仕事なんてそんなに多くないし、それが新米リーダーならなおさらです。チームなんだからチームの誰かがやれればいい。
チームに求められているのは、チーム全員で、期待されている分のアウトプットを出すこと。そのためにチームを見て、チームが必要としている役割を自分が果たすこと。その点においては、メンバーもリーダーも同じなのだと思います。
自分が理想のリーダーになるのではなく、みんなで理想のチームを目指すこと
原点に立ち返って、リーダーがなんのために必要とされるのかを考えるなら、それは「チームのため」であるはずです。であれば、リーダーの仕事はリーダーをすることではなく、良いチームを作ることです。
だから別に、自分がリーダーだから、なんて背負い込む必要はありません。むしろその思いは過剰すぎると呪いに転換して、こうして苦しい思いをすることになります。
チームを作ることは難しいけれど、一方で、実はすごく面白いことでもあります。でも呪いにかかっている間はそんな考え方はできなくて、それが一番もったいないのかもしれません。
毎日変化して成長していくチームをみんなで作っていくの、すごく楽しいんですよね。
そのうちいいチームを作れた実感が持ててきたり、チームの解散が心から惜しかったり、次のチームではどんなふうにやってみようかな〜なんて考えるようになれたら、もう大丈夫です。
おわりに
わたしも自分自身にかけてしまって苦しんだチームリーダーの呪い。この記事が、少しでも早く解き放たれるための一助になれば幸いです。